まもなく五十回忌の節目。世界チャンピオンのままこの世を去ったボクサーが、最後となった一戦で大逆転KO防衛を果たしたのは年の初め、1月2日だった――
下里 淳一
Junichi Shimozato
大場政夫が逝って49年、五十回忌という節目を迎える。
最後となった1月2日のあの試合、家のテレビで親父と見ていた。
ボクシング興行の範疇を越えたことが起こってしまって、だから早く試合を止めないといけないと、気持ちがざわついたことを覚えている。
逆転勝利の感動よりも初回の怖さが印象深い。
僕には地味なボクサーだった大場政夫なのに今も記憶にあるなんて、そうしてたぶんあの試合のせいで、僕は新年のたびに正月興行を懐かしんだり待ち望んだりしている。
大晦日の井岡一翔は横綱相撲でさすがだったけれど、もったいない。
年の瀬よりも年の初めのリングがいい。それがどんな勝負になろうとも、人の気持ちに長く響くような気が、僕にはするから。
2022.01.03
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