因縁のリターンマッチは、前チャンピオン寺地拳四朗が矢吹正道に完勝し、王座返り咲きを果たした。その流れは、昭和の"あの対決"にも似ているものだった――
下里 淳一
Junichi Shimozato
いきなりぐんぐん攻めていった寺地拳四朗。

開始30秒、敵は目の前のボクサーではなく、ジャッジする者たちなのかなと思った。前回の不可解かもしれない採点や、反則の可否についての憤りがあったのかと。
開始120秒、敵はジャッジではなく、前回の不甲斐ない(全然不甲斐なくはないんだけど)自分なのかなと思った。
最後は鮮やかなダウンで、加えてフィニッシュブローの前の左、右のボディを見て、好かったと思った。
拳四朗は決めどきに必ずボディが入ると僕は見ていて、こんどもそうだったのでそれが好かったと。そのボディも、フィニッシュが見えたときに無意識に出るんじゃないかとあらたに思った。
時代は変わっても《輪島功一vs柳済斗》に今回の連戦の流れが似てると思った。再戦での輪島と今回の拳四朗のファーストラウンドの動きは、初戦のKOシーンを知っているだけに、ともに観る者の意表をつくほどに果敢だった。
2022.03.20
Photo : H.Inoue
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