"パウンド・フォー・パウンド・キング"は彼のための言葉だ――クラシックなファンやジャーナリストにはいまも史上最高のボクサーに推す人も多い、シュガー・レイ・ロビンソンについて空想した。
下里 淳一
Junichi Shimozato
路上に人だかり。
米国の黒人コーラスグループがリズミカルなラヴソングを歌っている。
アイ・キャント・ヘルプ・マイセルフ
アイ・キャント・ヘルプ・マイセルフ
どうしようもないんだ どうしようもないんだ
好きで好きでたまらないんだ
好きで好きでたまらないんだ
見物は手拍子をとり、腰を振り、足を鳴らして唱和している。間奏のテナーサックスも華やぎを添える。
そこへシルバーグレーの三つ揃えで決めた長身の黒人が現れて、ほんの数秒、タップダンスを披露して、やんやの喝采を浴びた。右手を挙げて笑顔で応え、すぐにその場を離れる。
その後ろ姿に、史上最高のボクサーと称えられている人物ではなかったかと気づいて、おれはあわてて追いかける―――
つかのまでもいい、近くにいたい、そんな思いが突き上げてきた。
WOWOWで放送された スポーツドキュメンタリー「偉大なるアスリートたち シュガー・レイ・ロビンソン」を見ていて…ボクシングだけじゃない、歩く姿も優雅だったとアンジェロ・ダンディが言うのを聞いて、そんな空想をした。
2022.05.25
Photo : H.Inoue
Комментарии