どういうきっかけであれ、胸躍る好カードが実現するのはうれしい。話は出たものの実現には至らず、となってしまわないでほしいのだけれども――
井上 博雅
Hiromasa Inoue
史上最高の日本人対決
いつのまにか3月も半ば。
昨年末に対戦が決まりながら、オミクロン株拡大の水際対策によって延期されていたゲンナディ・ゴロフキンvs.村田諒太の世界ミドル級王座統一戦が、4月9日(土)に仕切り直されることが正式発表され、ジェルウィン・アンカハスがフェルナンド・マルチネスに敗れたことで、井岡一翔とのスーパーフライ級王座統一戦は白紙になった。
悲喜こもごもの、日本のトップボクサーがらみのマッチメーク。2021年のMVP、"真打"井上尚弥の次戦はノニト・ドネアとの再戦が濃厚のようだが――
今後対戦の可能性があるジョンリエル・カシメロが未成年女性に暴行? なんて嫌疑をかけられているという、事実だとしたら目を覆いたくなる報道(4/22のポール・バトラー戦はキャンセルされてないようで…事実ではない可能性大?)など、あまり明るくないニュースも見聞きしている。
もし統一戦交渉が不首尾に終わってしまったら、と想像して思い出したのが、1月中旬、名前こそ出さなかったとはいえ井上が井岡一翔に"ラブコール"を送ったというニュース。
井上尚弥 vs. 井岡一翔 ―――
ファンもメディアもワクワクする好カードだ。実現したら素晴らしいとは思ったものの、モンスターの発言から2カ月たった今も、井岡本人がこの件について反応も発信もしておらず、今のところ可能性は低いと思わざるを得ない。
わずか1階級、3ポンド(≒1.36キロ)の差とはいえ、スーパーバンタムに上げることも視野に入れる井上と、スーパーフライでも余裕がありそうに見える井岡。体格的なアドバンテージは井上にあるし、フィジカル面の差がなかったとしても井上優位の予想ができるカードではある。
この機運、タイミングを大事に…
もう2年以上に及ぶコロナ禍によって、興行やマッチメークが従来以上に困難となっているのは、井上にとっても井岡にとっても同じ。
統一に固執し、対戦交渉に時間を要して"試合枯れ"状態になることを避けたい井上陣営の思惑も、井岡がスーパーフライ級での4団体統一にこだわり、バンタム級での勝負はそのあとに、と考えるのもわかる。口にはしないだろうが、今モンスターと闘うのは分が悪いと思っているであろうことも想像できる。
同時に井岡に対しては、遠からず「制覇」をめざすと公言した階級に君臨している実力者が、対戦に前向きな発言をしたことをポジティブにとらえ、その気になってみてもいいんじゃないのか!? とも思う。
もちろん簡単なことじゃないが、ここを突破しての《5階級制覇》なら、4団体統一よりもっと価値がある。エリック・モラレスとマルコ・アントニオ・バレラのように激アツなファイトを繰り広げれば、興行規模も含め文字通り記録にも記憶にも残ることになろう。
井上発言が唐突で、井岡にしてみたらスマートじゃない挑発をされて面白くないのだろうが、そういう一方にとって降って湧いたようなきっかけだったとしても、対戦機運の盛り上がりって、大事…と外野が思っても、当事者が気乗りしなければどうしようもないか ^^;
あと何度防衛したらとか、〇〇〇を達成してからとか言ったり考えたりしている間に、モアベターな時期を結果として逸してしまうのが、いちばんもったいない。
自他ともに認めるトップ同士の対戦。もうあまり話題にもならなくなってしまっているが、この話がフェードアウト、自然消滅してしまうのは惜しすぎる。
2022.03.14
Photo : H.Inoue
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