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お忘れ物という病

更新日:2021年3月31日

毎日毎日、一つや二つや三つや四つや五つではない、膨大といっていい数の届けがある「お忘れ物」。不注意で駅や車内に忘れておきながら、好き勝手言い、横柄にふるまう輩にウンザリ――

うらごろー

Uragoro


あんなものも、こんなものも…

 終点駅に勤務していたある年の、1年間の登録総数は約2万3千、単純計算で1日平均63点だ。ここだけでこれだけの数。起点(都心)側のもう一方の終点駅はこの約2倍だった。両端だけで、遺失物登録が毎日毎日200件前後! の「お忘れ物」がある。


 券売機に10円残ってましたとか、そこに1円落ちてました、のような重要度が低いものも含まれているとはいえ、冷静にこの数を確認したとき、ちょっと異常だよなと感じたことを思い出す。


 電車内の網棚や座席、ホーム、ベンチ、トイレ、エレベータ。最近はイヤホンを線路に落とされるなんて事例も増えているが――


 財布、携帯電話、パスポートや免許証にクレジットカードなどの貴重品類をはじめ、これらの入ったカバン、ポーチ、ハンカチやマフラーに手袋(片方だけだったり両方だったり)といった服飾用品、スーツやコートなどの衣類、帽子、家や車や自転車のカギ、メガネ、靴、本、文房具類、カメラ、貴金属、腕時計、パソコンなどの家電製品、ギターやトランペットなどの楽器、バットやサッカーボールなどのスポーツ用品、弁当やお菓子などの飲食物、買い物袋、PASMOやsuicaといった鉄道ICカードに定期券 etc. etc. etc. ……


※写真はイメージです

 こんなデカいもの忘れちゃうのか? というような大型スーツケースが届くこともあるし、雨や雪が降ろうものならもう、"傘祭り"だ。


LOST and FOUND

 届いた(発見した)ものを遺失物検索システムに入力・登録し、問い合わせを別の駅にしたりされたり、それらしきものがあれば保管駅を案内したりされたり、タイミングによっては運行中の電車内の捜索を他駅に依頼したりされたりする日常。


 見つからないと、「ちゃんと探してんのか」と悪態ついたり逆ギレしたり。出てこなかったら弁償しろとかメチャクチャなことを言う輩も、一人や二人じゃない。「おまえんとこは泥棒を乗せてるのか!」なんて言われた同僚もいる。


 数日保管し、持ち主が不明のものは管轄の警察署へ送付だ。その準備・確認のために担当者は残業し(カイシャは時間外手当を支払い)、時と場合によってはタクシーまで使う。もちろんその費用はタダじゃない。


 手間暇とコストをかけ(なおかつ客から手数料なども取らず)、あっちを探せこっちも見ろと言われ、運よく見つかって保管駅へ引き取りに行く際の運賃は結構です、なんて"サービス"までしている路線もある。ここまでしても、約束した日までに引き取りに来ないことだって珍しくない。


 誰でも忘れ物をしたことはあるだろう。こんなこと書いてる自分にも、車内に忘れたものを見知らぬ誰かが駅へ届けてくれて、大事なものをなくさずに済んだ経験がある。忘れ物をすることじたいをとやかく言いたいわけではないけど――


 届けられることが当然と考えている人、120パーセント自分の不注意で発生させたことが原因で何人もの手を煩わせ、責任転嫁し、図々しく「それが仕事だろ」とまで口走る輩が多いことに、ほんとにウンザリする。


 見つかった際、ふつうに「助かりました。ありがとうございました」と言ってくれる人に、たまに会えるとホッとする。そんな機会が増えるようになればいいなと思うが、生きてるうちにそんな日は訪れそうもないと思える現状が、とても悩ましい…。

2020.11.08

Photo : Uragoro


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