デラホーヤ、トリニダード、パッキャオ、バレラにモラレス etc. etc. 世紀をまたいでも、スター選手が続々と台頭。実力者同士の対決も数多く繰り広げられ、新時代突入以降も華やかだった――
井上 博雅
Hiromasa Inoue
ゴールデンボーイ
前々回、前回に続いての"Rivalry"シリーズ、ラストは2000年代…に入る少し前からの、オスカー・デラホーヤらが拳を交えたウェルター級~スーパーウェルター級と、マニー・パッキャオの台頭によって盛り上がりの度合いが増した、スーパーフェザー級~ライト級(一部はもっと上の階級にも…)の戦線。
デラホーヤとフェリックス・トリニダードらが、1999年から2001年くらいにかけていちばん目立った2年間がもっとも濃密だったろうか。
試合内容は、この2人による”Fight of the Millenium”より、「デラホーヤ×アイク・クオーティ」戦のほうが白熱したけれど…
これ以外は、3度以上対戦したカードがないというのもあってか、全体としては意外と機会が多くなかったな…というのが、まとめてみての印象。
今回も勝ち点順に並べると――
デラホーヤ、フェルナンド・バルガスと2度ずつ闘ってどちらにも連勝したシェーン・モズリーが、いちばん上にくる地味具合。
バルセロナ五輪金メダリストでもあったデラホーヤは"センター"にいて、全員と渡り合いはしたものの、こうして表に示すと、残せた結果は今一つだったというしかない。
もう一つ、なんとなく物足りない点をあげるとするなら、トリニダードとクオーティが拳をまじえていたらどうなっていただろう…という点か。
パックマン襲来
2000年代以降といえば、すさまじい勢いでトップ集団に走りこんで中心的存在になった、"パックマン"マニー・パッキャオだ。
当初のニックネームは"プリティボーイ"だったフロイド・メイウェザーとパッキャオが、ともにデラホーヤ、モズリーと闘ってともに白星をあげているが、上の対戦表に入れると、列や段が増えてちょっと見づらくなってしまうので(入れても首位は変わらないし、いいか…)、こっちへ。
そして2003年のマルコ・アントニオ・バレラ戦以降、メキシコのビッグネームとパッキャオを交えた積極的マッチメイクが、振り返るとけっこうエキサイティング。
バレラに2戦2勝、エリック・モラレスには3戦して2勝1敗、ファン・マヌエル・マルケスとは4度対戦し、2勝1敗1分――この3人と計9戦。何試合か現地で取材もしたが、マルケスとの4戦目、観戦者をもザワつかせる失神KO劇は今も強く印象に残る。
4度も対戦したパッキャオとマルケスといえば…初戦の初回にマルケスが喫した3度のダウン。もしもレフェリーのジョー・コルテスが試合を止めていたら、その後どうなったろう?
フリーノックダウン制ではあったが、さすがにストップされると思ったようで、マルケスはあきらめたように頭をキャンバスにつけた。まだ初回、3度目(のダウン)は前2度ほどのクリーンヒットではなくダメージは浅い。コルテスは止めず、マルケスも立ち上がって続行されたが、ここで終了が宣告されてもおかしくなかった。
一方が3度倒し初回で決着したカードの再戦が組まれた可能性は低いと考えると、4度どころか2度目すらなかったかもしれない。パッキャオは勝ち越したけど、マルケスとは相性が悪かったのか。
この劣勢からフルラウンド闘い抜き、三者三様のドロー(=ジャッジ1人はマルケス勝利を支持)にまで持ち込んだ闘志と執念は、あっぱれ。 パッキャオが直接からまなくても、バレラとモラレスによるTrilogy――12ラウンド×3試合ももちろんグッド。
規模も事前の盛り上がりもものすごかった《メイウェザー×パッキャオ》戦、期待と試合内容が比例しなかったのは少し残念だった。
2020.04.16
Photo : H.Inoue